Japanische Klassiker mit Furigana
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ゆきのやどり
雪の宿り
神西 清
Lesen Sie 雪の宿り (ゆきのやどり) von 神西 清 (じんざいきよし) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.995 Zeichen · 51 Bildschirme
入込んだ妻飾りのあたりが黒々と残っているだけである。少しでも早い道をと歌姫越えをして、思わぬ深い雪に却って手間どった貞阿は、単調な長い佐保路をいそぎながら、この門をくぐろうか、くぐらずに右へ折れようかと、道々決し兼ねていたのである。
ここまで来れば興福寺の宿坊はつい鼻の先だが、応仁の乱れに近ごろの山内は、まるで京を縮めて移して来たような有様で、連歌師風情にはゆるゆる腰をのばす片隅もない。いや矢張り、このまま真すぐ東大寺へはいって、連歌友達の玄浴主のところで一夜の宿を頼もうと、この門の形を雪のなかに見わけた途端に貞阿は心をきめた。
玄浴主は深井坊という塔頭に住んでいる。いわゆる堂衆の一人である。堂衆といえば南都では学匠のことだが、それを浴主などというのは可笑しい。浴主は特に禅刹で入浴のことを掌る役目だからである。しかし由玄はこの通り名で、大華厳寺八宗兼学の学侶のあいだに親しまれている。それほどにこの人は風呂好きである。したがって寝酒も嫌いな方ではない。貞阿のひそかに期するところも、実はこの二つにあったのである。
その夜、客あしらいのよい由玄の介抱で、久方ぶりの風呂にも漬り、固粥の振舞いにまで預ったところで、実は貞阿として目算に入れてなかった事が持上った。