Japanische Klassiker mit Furigana
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ゆきのたけしとうげ
雪の武石峠
別所 梅之助
Lesen Sie 雪の武石峠 (ゆきのたけしとうげ) von 別所 梅之助 (べっしょうめのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.818 Zeichen · 12 Bildschirme
日が舂つく。山の端かけて空があからむ。その紅もうすく、よどんでしまう。風が私の頬をなぶる。春の風なら柔かになでるのだけれど、これは先陣が、つと頬を切ってゆくと、後陣がまた、すいと刺してゆく。夏なら人をもゆるしてやる。しかし今この冬の王の宮居ちかく、生物とてはここの世界の草木も、虫も、眠る時を、なぜ、そなたは踏み込んだのだと責めるように吹く。私は転がるように降りた。くらくなった空を仰いで、M君は、あれが北斗だろうという。わらがとれてから、草鞋と足袋との間にはさまる雪の珠になやまされる。ついに足袋の紐がずれる。草鞋をはきなおそうと、雪の上に足なげ出しての手まさぐり、ゲートルも、足袋も氷って、たやすく解けぬ。
いつか月が後から出てきた。山々がまた浮ぶ。私たちは月と雪とにてらされて、おりてゆく。松本の市街が脚下にかがやく。人のいうなる死は爰に、人のいうなる生は彼処に、しかも壮と厳と、美と麗と、人が自らせばめた社会の思いおよばぬものは、わが立つ所ならずして、いずれにあるのだろう、七時すぎ、浅間の宿についた。雪中十時間。私はかなり疲れていた。
差切新道、山清路