Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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くもとこもりうた

雲と子守歌

小川 未明

Lesen Sie 雲と子守歌 (くもとこもりうた) von 小川 未明 (おがわみめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.823 Zeichen · 10 Bildschirme

Aozora Bunko

」と、雲が、やさしくいいました。

さかんに燃えていた、西の海の炎が、いつしか波に洗われて、うすくなったと思うと、窓から見える空も、暗くなりかけていました。そして、白い雲も、赤い雲も、紫の雲も、どこへかかくれて消えてしまったのです。

「みんな、お家へ帰っちまった。」と、子供は、さもさびしそうに、つぶやきました。ひとり自分だけが、置き残されたように、頼りなさを感じたのでした。

晩の食事を告げる鐘の音が、廊下の方から、とびらを通して伝わりました。

「たいへん、おとなしかったのね。気分がいいんでしょう。お母さんは、坊やのいいのが、なによりうれしいんですよ。おみかんでもあげましょうか。」と、お母さんがいいました。

子供は、これに対して、すげなく頭をふりました。そして、うつろに開いた目で、電燈の光が、薄く弱々しく漂う、四方を見まわしました。ここには、明るい、清らかな、空の喜びはなく、すべてが灰色をして、ほこりがかかっているような気持ちがしました。

階下にある、外来患者の控え室に、かかっている時計の、鳴る音がしました。風が、吹きはじめたようです。引き窓のガラス戸は、いつか閉められました。