Japanische Klassiker mit Furigana
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くものこみち
雲の小径
久生 十蘭
Lesen Sie 雲の小径 (くものこみち) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.634 Zeichen · 33 Bildschirme
「私の心境は澄みきっているので、女っ気はいやだといってるんですよ。男ってものは、そんな気持になることもあるんだから、認めてほしいですね」
と追いたてにかかったが、柚子は、
「伺っています、もっと、おっしゃって」
笑うだけで、動く気色もなかった。
「お気にさわったら、あやまるけど、あたし、これで真面目なのよ」
「真面目でないほうがいいね。むずかしい話なら、聞きたくない」
柚子は眠りにつく子供のようなしずかな顔つきになって、しんと天井を見あげていたが、
「寒いわね。また高度をあげたのよ。すみませんけど、換気孔の口、そっちへむけてくださらない。首筋がスウスウしますから」
と、おぼろな声でいった。
白川は換気孔の口を向けかえようと、そちらへ手を伸しかけたひょうしに、機体が偏揺れしたので、座席にどすんと尻餅をついた。
柚子は白川のぶざまなようすを見据えたうえで、
「白川さん、あなた招霊問答に凝っていらっしゃるって噂だけど、ほんとうの話なの」
と、だしぬけにそんなことをいった。白川は照れかくしに、煙草をだして火をつけながら、
「そんなこともあった、というところかな。いまは、やっていません」