Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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でんしゃのみえないでんしゃどおり

電車の見えない電車通り

宮本 百合子

Lesen Sie 電車の見えない電車通り (でんしゃのみえないでんしゃどおり) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.599 Zeichen · 12 Bildschirme

Aozora Bunko

「――どうした? 電車――」

と茶の間に顔を出した。

「ああ、やった」

身持ちの弟嫁が縫物から丸顔をあげてすぐ答えた。

「源ちゃん、何で行ったの?」

「バスは通ってるんですって」

その縁先の庭で、もう落ちはじめた青桐の葉っぱを大きな音を立てて掃きよせていたシャツ姿の家の者が、

「電車も、たまですが通ってますよ」

と云った。この遠縁の若者は、輜重輪卒に行って余り赤ぎれへ油をしませながら馬具と銃器の手入れをしたので、靴をみがくことまで嫌いになって帰って来た男である。

午後になって、私は家を出かけ、もよりのバスの停留場に立った。この線はふだんでも随分待たなければ来ないところである。雨の用意の洋傘を中歯の爪皮の上について待っていると、間もなく反対の方向から一台バスがやって来た。背広で、ネクタイをつけ、カンカン帽をかぶった四十男が運転台にいる。見馴れぬ妙な眺めだ。

坂の下り口にかかると、非常に速力をゆるめ、いかにも、曲り角などの様子を気遣う工合でそのバスが行ってしまうと、いれ違いに、一台下から登って来た。

停留場を通りすぎそうなので、私はいそいでかけ出しながら片手をあげ、腰かけてから見ると、運転手は白縮のシャツに黄ズボン姿。