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Japanische Klassiker mit Furigana

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でんしゃのみえないでんしゃどおり

電車の見えない電車通り

宮本 百合子

Lesen Sie 電車の見えない電車通り (でんしゃのみえないでんしゃどおり) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.599 Zeichen · 12 Bildschirme

Aozora Bunko

私の乗っているバスの俄車掌は、停留所が近くなると、長い体を折って一々前方をすかして見ては、

「次は××町でございます。お降りの方はございませんか」

と呼んだ。そして、降りる者があると、その一人一人の後から、

「ありがとうございます」

と云うのである。その夏服の肩や襟のあたりはいい加減やけている。きょう一日のスキャッブ代金四円をこの男は夜になってどんな感情で数えるであろうかと思った。

昭和七年の争議では強制調停によってクビになった連中が、今日、あの当時からみると三円もやすくスキャッブに呼び出されている。それらの人々はどんな心持で乗車しているだろう。千何百名とかに、電気局は召集の電報を打ったそうだが、その人をばかにした呼び出しを突っぱねることの出来た者は、果して何割あったろうか。私は、シャツ一枚の運転手や長い脛を力一杯踏ばっても猶よろよろしながら片手で大切そうに鞄を押える俄車掌の姿を、憐憫と憤怒のまじりあった感情で見つめるのであった。

私のその視線が、揺れながら進行するバスの中で一つのものに止った。ステップに近いところに、客から受取った切符をいれるためのニッケル色の小判型の箱がついている。