Japanische Klassiker mit Furigana
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しんさいにっきより
震災日記より
寺田 寅彦
Lesen Sie 震災日記より (しんさいにっきより) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.471 Zeichen · 14 Bildschirme
それからまた氷袋に水を入れたのを頭にぶら下げて歩きながら、時々その水を煽っているのもある。と、土方風の男が一人縄で何かガラガラ引きずりながら引っぱって来るのを見ると、一枚の焼けトタンの上に二尺角くらいの氷塊をのっけたのを何となく得意げに引きずって行くのであった。そうした行列の中を一台立派な高級自動車が人の流れに堰かれながらいるのを見ると、車の中には多分掛物でも入っているらしい桐の箱が一杯に積込まれて、その中にうずまるように一人の男が腰をかけてあたりを見廻していた。
帰宅してみたら焼け出された浅草の親戚のものが十三人避難して来ていた。いずれも何一つ持出すひまもなく、昨夜上野公園で露宿していたら巡査が来て○○人の放火者が徘徊するから注意しろと云ったそうだ。井戸に毒を入れるとか、爆弾を投げるとかさまざまな浮説が聞こえて来る。こんな場末の町へまでも荒して歩くためには一体何千キロの毒薬、何万キロの爆弾が入るであろうか、そういう目の子勘定だけからでも自分にはその話は信ぜられなかった。
夕方に駒込の通りへ出て見ると、避難者の群が陸続と滝野川の方へ流れて行く。表通りの店屋などでも荷物を纏めて立退用意をしている。