Japanische Klassiker mit Furigana
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しんさいにっきより
震災日記より
寺田 寅彦
Lesen Sie 震災日記より (しんさいにっきより) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.471 Zeichen · 14 Bildschirme
後から考えるとこんなことを聞くのが如何な非常識であったかがよく分るのであるが、その当時自分と同様の質問を車掌に持出した市民の数は万をもって数えられるであろう。
動物園裏まで来ると道路の真中へ畳を持出してその上に病人をねかせているのがあった。人通りのない町はひっそりしていた。根津を抜けて帰るつもりであったが頻繁に襲って来る余震で煉瓦壁の頽れかかったのがあらたに倒れたりするのを見て低湿地の街路は危険だと思ったから谷中三崎町から団子坂へ向かった。谷中の狭い町の両側に倒れかかった家もあった。塩煎餅屋の取散らされた店先に烈日の光がさしていたのが心を引いた。団子坂を上って千駄木へ来るともう倒れかかった家などは一軒もなくて、所々ただ瓦の一部分剥がれた家があるだけであった。曙町へはいると、ちょっと見たところではほとんど何事も起らなかったかのように森閑として、春のように朗らかな日光が門並を照らしている。宅の玄関へはいると妻は箒を持って壁の隅々からこぼれ落ちた壁土を掃除しているところであった。隣の家の前の煉瓦塀はすっかり道路へ崩れ落ち、隣と宅の境の石垣も全部、これは宅の方へ倒れている。