Japanische Klassiker mit Furigana
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きりのなか
霧の中
豊島 与志雄
Lesen Sie 霧の中 (きりのなか) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.920 Zeichen · 40 Bildschirme
四五日してぽっくり死んだ。吊された着物に息をとめられたようなものだ。然し静かな死に方だった。笊の上の鮒が、口をぱくっぱくっとやるように、最後に大きく口を二三度動かして、喉がぐるっと鳴って、それきりだった。
「僕はそれを見たんだよ。」とチビはいった。
正夫は黙っていた。
「どうしたんだい。」
正夫はまだ黙っていた。
「よく分らないのかい。僕にだってよくは分らないよ。おかしなものさ。恋人の着物をぶら下げておいて、撫でたり抱きしめたりする者もあれば、あの婆さんのように、ぶら下ってる娘の着物を見つめて、口をぱくぱくやって死ぬ者もあるし、僕にだってよく分らないよ。」
正夫はやはり黙っていた。
「今の話、君は恐がってるんだね。」
正夫は頭を振った。
「鳥のことを考えていたんだ。」
「鳥? 何の鳥だい。」
「何という鳥だったか……田舎に行くと、田園の中で、真暗な夜に、ほうほう……と鳴いてるのがいるだろう。」
「うん、いるよ。」
「あれね、子供を探してるんだって話があるよ。子供がいなくなって、どこへ行ったか分らない。お母さんは心配して、あっちこっち探し廻った。いくら探しても分らない。