Japanische Klassiker mit Furigana
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きりのなか
霧の中
豊島 与志雄
Lesen Sie 霧の中 (きりのなか) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.920 Zeichen · 40 Bildschirme
た。手はかすかに震えるが、下の白紙は微動だにしない。暫くすると、彼は手を引込めて、ほーっと息をつく。また白紙を見つめて、右手をその上に差出す。そんなことを何度か繰返した後、彼はいきなり着物をぬぎすて、襯衣までぬぎ放し、下腹をなでさすり、じっと眼を定め息をこらして、白紙の上に右の掌をかざしながら、我を忘れて一生懸命になってるのだ。それにも拘わらず、不思議なことには、蒼ざめた頬の口もとに、皮肉な自嘲めいた笑いの影が浮んでいる。その裸体の半身像は、もう人間の姿じゃない……。
――少しばかげてますね。その、ちっとばかりのばかさ加減が、あなた自身の頭の隅っこにも引っかかってるので、到底、だめですよ。
チビの声に、それとも不成功のせいか、南さんは腹をたてて、白紙を引裂き、手に丸めて投げすててしまった……。
「あの時にも、もう僕は、君のお父さんを危いと思ったよ。」とチビは云った。
正夫は黙っていた。
「あんなことを、君には分らなかったのかい。」
「その……紙の上に手を差出すというのは、どうしてだい。」と正夫は尋ねた。
「普通の手品さ、ちょっとした薬品で出来る。紙には仕掛があるんだ。