Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きりのなか

霧の中

豊島 与志雄

Lesen Sie 霧の中 (きりのなか) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.920 Zeichen · 40 Bildschirme

Aozora Bunko

」

「どっちだって同じさ。」

「ちがうよ。君に分らないだけだ。お父さんのことだって、君には分ってやしない。お父さんは、力がぬけてたけれど、それでも、海に飛びこむだけの力はあったんだ。両手をひろげたまま飛びこんだと思うよ。」

「そんなこと、豪かあないよ。」

「豪くはないさ。」

「じゃあ何だい。」

正夫は返事をしなかった。チビも口を噤んだ。二人とも妙に淋しいものにぶっつかったのである。

南さんの歩き方が少し怪しいのは、単に酔ってる時ばかりではなかった。ふだんでもどうかすると、膝の関節に弾力がなく、軽微な中風患者みたいに、ぎくしゃくした歩きようをした。それから、例えば茶碗とか箸とかを取る時、少し見当をちがえて、手がわきにそれることもあった。土瓶やコップを引っくり返すことも多かった。身体の平衡を取り失ってるらしかった。

然し南さん自身は、何か沈欝に考えこんだ様子で、そして泰然と落着きはらっていた。三島さんの伯父さんとかいう人が来た時なんか、南さんは愛想よくそれを二階に招じたのだった。――三島さんという若い女の人は、正夫も知っていた。いつか家に来た時、大理石と青い玻璃とで出来てる大きなインクスタンドを貰ったことがあった。