Japanische Klassiker mit Furigana
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きりのなか
霧の中
豊島 与志雄
Lesen Sie 霧の中 (きりのなか) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.920 Zeichen · 40 Bildschirme
すかして見ると、その檜葉の葉先に、一面に露がたまっていた。それが澄みきって、氷のようで、きらきら光っていた。雨の雫だってそんなにたくさんたまるものではない。霧がそこに水滴となって一面にくっついたのであろう。枝をゆすると、重々しくばらばら散る。よく見せてあげよう、と南さんはいって、正夫を胸に抱きあげた。正夫は眺め入り、それから枝を引張った。二人とも雫を頭から浴びた。そして笑った。また次の檜葉のところへ行った。正夫は枝を引張った。二人は雫を頭から浴びて笑った。
「あの晩のこと、なんだかへんだよ。」と正夫は云った。
「どうしてだい。」とチビは尋ねた。
「あんなに遅く、お父さんと一緒に外を歩いて、雫をかぶって遊んだのが、ふしぎだよ。あの頃、お父さんは僕のことをちっともかまってくれなかったし、僕もお父さんがなんだかきたならしかったんだもの。」
「きたならしいって?」
「いろんないやな匂いがしみついてるような気がしたんだ。」
「そうかも知れないさ。」
「そうじゃないよ。ただそんな気がしたんだ。」
「だから、露の雫をあびせて、清めてやったってわけかい。」
「そんなことをいう奴は、ばかだよ。