Japanische Klassiker mit Furigana
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きりのなか
霧の中
豊島 与志雄
Lesen Sie 霧の中 (きりのなか) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.920 Zeichen · 40 Bildschirme
正夫は森の方にやっていった。森はその辺みな闊葉樹で、その葉はただ濡れてるだけで、美しい露の玉はかかっていなかった。正夫はだんだん奥深く進んで行った。針葉樹の立交っているところに出た。然しその葉にも、美しい露の玉はあまりなかった。正夫はなお進んでいった。土地が次第に低く、谷間らしいところに出た。そこで森が切れていて、草地があり、その先は濃霧にとざされていた。
何か怪しい声がした。幾つもした。ちょっと静まって、また一度に聞えてきた。向うの、森の外れの木の上から来るらしかった。正夫は用心しいしい近よっていった。濃い霧のなかに、椎の木らしい茂みの中に、何か動いている。声を立てている。見ると、二三匹の猿だった。小さいのがないており、大きいのが頭をかいている。その向うにもまたいた。上の方にもいた。小さいのが枝から枝へ飛び移っており、大きいのが時々それを追っかけている。
正夫はそこに屈んで、じっと眺めていた。それから、くすっと笑った。彼は洋服を着ていた。傍の柴の小枝を折り取って、それを背中のバンドにさし、襟にさした。そして四つ匐いになって、徐々に猿の方へ近づいていった。