Japanische Klassiker mit Furigana
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せいねんそうとえいざんのろうや
青年僧と叡山の老爺
若山 牧水
Lesen Sie 青年僧と叡山の老爺 (せいねんそうとえいざんのろうや) von 若山 牧水 (わかやまぼくすい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.808 Zeichen · 12 Bildschirme
其処に行くのは私自身実に久しぶりであった。松原の中に入ってゆくと、もう秋というより冬に近い静けさがその小松老松の間に漂うていた。海も珍しく凪いでいた。入江を越えた向うには伊豆が豊かに横わり、炭焼らしい煙が二三ヶ所にも其処の山から立昇っているのが見えた。
砂のこまかな波打際に坐って、永い間、京都のこと、其処の古い寺々のこと、歌のこと、地震のこと、それとはなしにまた彼の一身のことなどを話しているうちに、いつか上げ潮に変ったと見えて小波の飛沫が我等の爪先を濡らす様になった。では、そろそろ帰りましょうか、と立ち上る拍子に彼は叫んだ。
「ア、見えます見えます、いいですねエ。」
と。先刻からまちあぐんでいた富士が、漸くいま雲から半身を表わしたのだ。昨夜の時雨で、山はもう完全にまっ白になっていた。
「ほんとうにいい山ですねエ、何と言ったらいいでしょう。」
私はそれを聞きながら思わず微笑した。漸く彼が全てを忘れて、青年らしい快活な声を出すのを聞いたからである。
帰って来ると、子供たちが四人、門のところに遊んでいた。そして、
「ヤ、帰って来た帰って来た。」
と言いながら飛びついて来た。