Japanische Klassiker mit Furigana
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あおふくのおとこ
青服の男
甲賀 三郎
Lesen Sie 青服の男 (あおふくのおとこ) von 甲賀 三郎 (こうがさぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.026 Zeichen · 29 Bildschirme
「死んだ旦那の跡取の人だアよ」
「ふむ、甥っ子だが、あんでもそんな人が跡さ継いだと聞いたっけが、跡取ってから一度もこの別荘さ来た事がねえだ。どんな人だか、誰知るものもねえだが」
「その人がね、昨日の朝見えたゞよ」
「不意にかよ」
「ウンニャ、前触れがあってね、掃除さしといて呉れちゅうから俺、ちゃんとしといたゞ」
「一人で来たのかよ」
「ウン、顔の蒼白え若え人でな。年の頃はやっと三十位だんべい。ちょっくら様子のいゝ人だアよ」
「それでお前、オッ惚れたちゅうのかい」
「この人は。馬鹿吐くでねえ。俺の年でハア、惚れるのなんのちゅう事があるもンけえ」
「ハヽヽ、怒るでねえ。それからどうしたゞね」
「昼間は家ン中や庭さ歩き廻って、何するでなしにソワ/\してたっけが、夕方になって、俺頼まれた通り夕飯さ拵えて持って行くと、どこにもいねえだ」
「いねえ――どうしたゞね」
「分らねえだよ。兎に角、どの位え探してもいねえだ。どこかへ行っちまったゞよ」
「だけども、可笑しいでねえか。飯さ頼んで置いてよ」
「俺も可笑しいと思ったゞが、いねえものはいねえさ。断りなしに帰るとは変な人だと、ちっとばかり腹さ立ったゞよ。