Japanische Klassiker mit Furigana
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あおくさ
青草
十一谷 義三郎
Lesen Sie 青草 (あおくさ) von 十一谷 義三郎 (じゅういちやぎさぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.645 Zeichen · 14 Bildschirme
兄は歌津子と結婚した。そして幸福であった。
ある日兄は少し興奮して弟を研究所へ引張っていった。トリキナ病の血清注射の研究に使われる鼠や鶏の肝臓で何カ月も飼養されてるイモリがガサガサと音を立ててる間を抜けて彼らは大きな机の前へ行った。机の上にはアルコホル漬けにした蜘蛛の壜がいくつも並んでおり、その前の硝子器の中にも一匹大きなやつがじっと伏せられている。それがよく見ると、四対ある単眼の七つが、押し潰されて、そこに黒ずんだ粘液が盛り上っているのだ。
弟はそっとそれとその前にある黒眼鏡をかけた兄の蒼白い顔とを見較べた。
「これは盲じゃないんだぜ。」そう言って兄は、アルコホルランプの焔で引き伸ばした細い硝子の棒の先端を蜘蛛の眼のところへ近づけた。蜘蛛は四ミリほどの褐色の剛毛の立っている脚で緩慢に方向を転じた。兄は冷く笑った。それから彼の前に並んでいる犠牲者たちの歴史を説明した。
彼はまず蜘蛛の雄と雌を捕えた。そしてその毛並みの艶やかな美男の雄の単眼の一つへ硝子の針を刺し通してから、これを花嫁に与えた。一群の子が生れた。拡大鏡で見ると、子は一人一人立派な眼の持ち主だった。