Japanische Klassiker mit Furigana
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あおひげにひゃくはちじゅうさんにんのつま
青髯二百八十三人の妻
久生 十蘭
Lesen Sie 青髯二百八十三人の妻 (あおひげにひゃくはちじゅうさんにんのつま) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.736 Zeichen · 28 Bildschirme
誇張していえば、これは歴史的瞬間とでもいうようなものであった。凡庸な二人の中年の刑事は、これこそは、犯罪というものの歴史がはじまって以来の最大の捕物になろうとは、夢にも思っていなかったのである。
セェヌ河の左岸と中ノ島をつなぐサン・ミッシェルの橋がむこうに見えだしたとき、ランドリュは、なに気ないふうに上着の内かくしから出した手帳のようなものを車道へ捨て、縁石の裾にあいている排水溝の穴へそっと蹴込もうとした。
刑事の一人が、
「おっと」
といって穴に落ちかけている手帳を靴でふまえた。
「おかしな真似をするじゃないか。どうしようというんだ」
拾いあげて、頁をひらいてみると、年月日や、人の名や、金額などが、気質が察しられるような克明な文字でキチンと書きこまれてある。
「これはなんだい」
「むかし使った取引の手帳だ。要らないから捨てようと思っただけだ」
刑事は手帳を持ったまま、ふむ、といってランドリュの顔を見かえした。
ランドリュは苛立って舌打ちをした。
「符牒で書いてあるから、見たってわかりゃしないよ」
「符牒ね……なるほど、そうらしい」
「ひねりまわしていないで、こっちへよこせ」