Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
かばんらしくないかばん
鞄らしくない鞄
海野 十三
Lesen Sie 鞄らしくない鞄 (かばんらしくないかばん) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.653 Zeichen · 73 Bildschirme
かくして警視田鍋良平氏は、例日の如くちゃんと課長席におさまったのである。
少女の給仕が、縁のかけた大湯呑に、げんのしょうこを煎じた代用茶を入れてほのぼのと湯気だったのを盆にのせ、それを目よりも上に高く捧げて持って来た。課長は彼女がその湯呑を、いつもと同じに、硯箱と未決既決の書類函との中間に置き終るまで、じっと見つめていた。
少女の給仕が、振分け髪の先っぽに、猫じゃらしのように結んだ赤いリボンをゆらゆらふりながら、戸口近い彼女の席の方へ帰って行くのを見送っていた田鍋課長は、突然竹法螺のような声を放って、誰にいうともなく、
「あーア、昨夜から、何か変ったことはなかったかア」
と、顔を正面に切っていった。そして手を延ばして大湯呑をつかむと、湯気のたつやつを唇へ持っていった。破れ障子に強い風が当ったような音をたてて彼は極く熱つのげんのしょうこを啜った。近来手強い事件がないせいか、どうも腸の工合がよろしくない。
ばたんと机に音がして黒表紙の帳簿が課長の前に置かれた。「事件引継簿第七十六号」と題名がうってある。課長は大湯呑を左手に移し、右手の太い指を延ばして帳簿の天頂から長くはみ出している仕切紙をたよりにして帳簿のまん中ほどをぽんと開いた。