Japanische Klassiker mit Furigana
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かばんらしくないかばん
鞄らしくない鞄
海野 十三
Lesen Sie 鞄らしくない鞄 (かばんらしくないかばん) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.653 Zeichen · 73 Bildschirme
最後に特別になまめかしい鹿の子緋ぢりめんの長襦袢を上にのせ、それから鞄の蓋をしめたのであるが、ぎゅうぎゅうに詰まっているので蓋は外に向って太鼓腹のように膨らんだ。そのあとで彼、酒田は意外なことを発見して強く舌打をした。
「ちょッ。この鞄には、鍵が二箇もぶら下っているのに、肝腎の錠前がついていないじゃないか。見かけによらず、とんだインチキものだ。ええッ、腹が立つ!」
鍵はあれども鍵穴がない。これでは仕様がない。折角トランクに詰めて、明日は横浜へ売りに行こうという寸法だったが、鍵のかからないトランクでは、あっちへ持っていったり、こっちへ預けたりしているうちにあぶないことになりそうだ。だが、折角ぎっしり詰めこんだものを、他のトランクに移すのは面倒だ、今夜はこのままにして、後は明日のことにしようと、闇屋の旦那はこのところ聊か過労の体にて、寝椅子の上へ身体をのせた。
「旦那さま。もうここの戸締りをいたしてよろしゅうございましょうか」
婆やの声である。
酒田が、締めておくれというと、婆やさんは硝子戸をあけて、長い廊下を箒でさらさらと掃き出し、それから戸袋のところへ行って板戸を一枚一枚繰り出し始めたのである。