Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.832 Zeichen · 24 Bildschirme
「ああ、狐だよ、九尾の狐だ。……小癪な真似をして、あとで臍を噛むなよ。……放されたうえは、手前なんぞに掴まるものか」
顎十郎は、長大な顎のはしをつまみながら、
「いや、そうはいかん。……俺は捕まえぬが、必ず叔父がつかまえる。……あれでなかなか感のいいほうだから、この万年青の鉢の底にあるお前の印籠の高肉彫を見たら、稲を啣えた野狐の図は、むかし、堀江大弼の指物絵だったことを思い出すにちげえねえ、……なア、堀江」
職人は見るみる蒼白になって、俯向いて唇を噛んでいたが、匕首を腹掛の丼におさめると、首を垂れたまましずかに出て行った。
顎十郎が錦明宝の鉢を叔父の文机の上に据えて待っていると、夕方近くなって庄兵衛が鼻のあたまを赤くして、かんかんに腹を立てて帰って来た。
顎十郎は、えへら笑いをしながら、
「どうした、やはり化かされましたろう。……だから、言わねえこっちゃアねえ。なにしろ、初午は魔日ですからな、ふッふ」
庄兵衛は、地団太を踏んで、
「うるさい、黙っておれというに」
顎十郎は、すました顔で、
「まあ、そう怒っても仕様がない……時に、叔父上、あなたが印籠を探していられるってことは、実は、私も知っているんです。