Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.621 Zeichen · 25 Bildschirme
御船手付から北町奉行所へとどいた取調書のほうがむしろ詳しいくらい。なんという手掛りもなく、ぼんやりと御船蔵を出てきた。これから両国の『坊主軍鶏』へでも行って昼飯にしようというつもり。
植溜から灰会所のかどを曲って新大橋のたもとまで来かかると、なにを思ったか、顎十郎は、急に口をきって、
「それはそうと、おれは甲府から出てきたばかりの山猿で、船送りなんてえものを見たことがないが、船送りというのは、いったいどんなことをするものだ」
「べつに変ったこともありませんが、たいてい朝の六ツか七ツ半ごろ、囚人を伝馬町の牢からひきだして駕籠に乗せ、南と北の与力と同心がおのおの二人ずつ八人がつきそって御浜か永代橋、さもなければ蠣店か新堀、そのどこかの河岸まで持って行きますと、御船手からさしまわした送り船がもうそこへきて待っている。与力と御船手が立ちあいの上で、送り帳と人間を照しあわせて間違いがないとなると、艀舟に乗せて品川沖の遠島船へまで送りとどける。……艀舟へ乗せるわずかの暇に見おくりの親子兄弟と名ごりを惜しませるんですが、これがまたたいへんでしてね、流されるほうも送るほうも泣きの涙。