Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.061 Zeichen · 22 Bildschirme

Aozora Bunko

「あたしの苦手は、田舎の親類と突きだしのところてん。……どうも、お辞儀のしずめで、すっかり肩を凝らしてしまいました」

と、ぐったりしているところへ、襖のそとから、ごめん、と挨拶して入って来たのは、多摩新田金井村の名主、川崎又右衛門。

大和の吉野山から白山桜をはじめてここへ移植した平右衛門の曽孫で、界隈きっての旧家。ひょろ松が、溝川の中を藁馬をひきずりまわしていたころには、さんざ世話をかけた叔父さん。

白髪の、いかにも世話ずきらしい気の好さそうな顔をしているが、なにか心配ごとがあると見え、久濶の挨拶も、とかく沈みがちである。

ひょろ松は、眼聡く眼をつけて、

「お見うけするところ、いちいち、ためいきまじり。……今夜、わざわざおいでくだすったのは、なにか、この松五郎に頼みでもあってのことではございませんでしたか」

又右衛門は、憂れ顔でうなずき、

「いかにも、その通り。……じつは、一月ほど前から、家内に、なんとも解しかねる奇妙なことが起き、このまま捨ておいては、たったひとりの娘のいのちにもかかわろうという大難儀で、わしも、はやもう、悩乱して、どうしよう分別も湧いて来ぬ。