Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.494 Zeichen · 26 Bildschirme
事と次第によっては殿様にお願いして、半日の猶予をいたすことも出来よう。して、御高位とは、いったいどなたのことだ」
顎十郎は、
「恐れながら」
と言いながら、藤波のそばにすり寄って、自分の手のひらへ指で丸を書いて見せた。藤波は見るより恐悚の色を浮かべ、
「おッ、それは大事!」
あわただしく膝をついて、
「して、望みの品というのはどんな物だ」
「香木五十八種はもとより、市中にて売出しおります髪油、匂油いっさい。ひとまとめにしてお差しいれを願います。ただいまも申しあげましたように、危急存亡の場合、なにとぞ速急のお取りはからいを……」
「いかにも、承知いたした」
言いすてて、藤波は脱兎のように揚屋から飛びだして行った。
顎十郎は、その後を見おくりながらニヤリと笑い、
「こうしておけばまず大丈夫。それにしても、あの気ちがい野郎はなにを勘違いして泡をくってスッ飛んで行きやがったんだろう。おれは、お前の肝ッ玉はこんなに小さいと指で丸を書いて見せただけなんだが、あの頓馬のことだから、丸を書いたのを、御本丸のことなのだと早合点したのかも知れない。こいつア、大笑いだ」
それからちょうど半刻。