Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.406 Zeichen · 27 Bildschirme
たように一度も言わなくなり、気味が悪いだろうと思われるような汚れた枕紙に頭をのせて平気でいるのです」
「ちょっとお訊ねしますが、それは、いったい、いつごろからのことですか」
「……この月の七日の夕方、急に変がきまして、一時は絶気して手足も冷たくなり、泣く泣く葬式の支度をしかけたのですが、あたくしがそんな気がしだしたのは、その翌日の、八日ぐらいからのことだと思います」
アコ長は、ボッテリした顎の先をのんびりと爪繰りながら、
「いや、よくわかりました。それでお米さんとやらが、そうやすやすとすりかえたり入れ変ったりすることが出来るようなぐあいになっていたのですか」
利江は、飛んでもないというふうに頸を振って、
「姉は熱のかけ冷めがはげしく、風にあたってはよくないということで、ずっと土蔵の中で臥っておりました。土蔵と申しても座敷土蔵で、廊下にかこまれた中庭にありますので、前栽からも遠く、もちろん玄関や裏口などからもよっぽど離れておりますんです。それに、姉の枕もとには父と母とあたしが番がわりに、いっときもそばを離れぬようにして附添っておりましたのですから、たとえどのようなことをしてもあの大病の姉を土蔵から運びだし邸の外へつれてゆくなどということは思いもよらず、まして、替玉になるひとが数々の座敷を通って誰にも見咎められずに