Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.674 Zeichen · 36 Bildschirme
袂時計を出して見ながら、
「この袂時計で、いま、ちょうど三字五分前。……いいか、キッチリ三字になったら駕籠を吊りだしてくれ。おれは三十分おくれてここから駈けだすから……」
「よろしゅうございます」
「一分ちがっても青地の生死のわかれ目。しっかりやってくれ」
と言って、部屋頭に、
「お前に、この袂時計をあずけておくから、キッチリ四十ミニュートで一ツ橋にかかるように頼むぞ」
「合点でございます」
「こう見えても、駈けるほうじゃめったに人にはひけは取らねえ。……いわんや、喰うや喰わずの青地の駈けるのとはわけがちがう」
そう言っているうちに、三字。
それ舁きだせというので、為と寅がグイと腰をあげる。部屋頭がつきそって、
「じゃ、まいります」
「さあ、行ってくれ」
みなががやがや言いながら、正門のほうへ送って行く。
顎十郎は、氷室の腰掛へかけて時間のくるのを待っていると、そのうちにお時計のあるほうからドーンと時刻の太鼓。
ちょうど、三字半。
裾をジンジンばしょりにし、草履をぬいで跣足になると、
「さあ、行くぞ!」
いきなり闇雲に駈けだす。
空地をまわってお長屋わき、正門から本郷の通りへ飛びだすと、本郷一丁目を右へ壱岐殿坂。