Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.819 Zeichen · 26 Bildschirme
……おい、姐や、丸煮を二人前に、鬼菱を一升持って来まっせ、急ぎだ急ぎだ、焦がれ死にをしそうなのが、ここに二人いる。迅速に持って来酒まッせ」
酒はいい加減に切りあげて、柳川鍋でめしを五六杯。このお代が、五百五十文。
もとより、こちらは一文なし。どうするのかと見ていると、とど助が大束なことを言い出した。
「これこれ、姐や、主人はおるか。おるならちょと会いたいが……」
妙な顔をして小婢が板場へ駈けこむと、間もなくやって来たのは、ひどく兄哥面をした駕籠役の帳面つけのような男。突っ立ったまま横柄な口調で、
「ご用ってのは、いったいなんです。柳川鍋の中へ鑷でも入っていましたか」
ナメたようなことをいう。
とど助は、落着きはらって、
「いや、そんなものは見あたらなかった。わざわざ呼び立てたが、用事というのは、ほんの、ちょっとしたことだ」
「なんでえ、こいつは。嫌に持ってまわったことを言いやがる。こっちは忙しいんだから、あっさりやってもらいてえね」
「おお、そうか。それならば、あっさり言おう。……実は、銭がない」
「なんだとッ」
「そんな恐い顔をするな。銭というものはな、あるときもあれば、ないときもある、また、あるところからないところへ常にとどこおりなく流通するのが常道なのであって、一所に長く停滞するのは経済の道に外れている。