Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.783 Zeichen · 22 Bildschirme
「じゃア、ご名人にたずねるがの、するてえとなんだナ、竿さえひっかついでそこへ行きゃあ、いやでも、釣れるてえわけか」
「ごじょうだん」
と、らっきょう、いやな顔をする。
「まア、そりゃじょうだんだがの、ちょいとききたいことがある」
と、いいながら、懐紙のあいだから、うやうやしげに一本の釣鈎をとり出し、
「おれのおやじは、ひどい釣気狂いでの、いまわの際におれを枕もとによび、血筋というものは争えないもので、いずれは、お前も釣りに凝り出すようなことになるのだろうが、そのせつは、忘れてもほかの釣鈎で釣ってはならねえ。どうでも、この鈎で釣ってくれ、といってナ、そうして、眼をおとした。……なにしろ、いまわの頼みだから、どうせ釣りをするなら、これと同じ鈎で釣ってやりてえと思うのだが、これと同じものが、貴様のところにあるかな」
例によって、わけのわからぬことをいう。番頭は鈎を手にとって眺めていたが、
「そもそも、鱚鈎ともうしますのはむずかしいもので、例えば善宗流の沖鈎、宅間玄牧流の隼鈎、芝高輪の釣師太郎助流の筥鈎などと、家伝によりましていろいろ型がござりますが、……しかし、これなぞは、普通、見越鈎といわれる、ごくありふれたもので、へへ、御遺言までもございません、手前どもでは、一本一文に商っております」