Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.248 Zeichen · 27 Bildschirme

Aozora Bunko

「乳房が馬鹿でかすぎらア」

千太は、えッといって藤波の顔を見ていたが、急に、へらへらと笑い出して、

「こりゃア、どうも。……旦那まで千賀春の御講中だったたア、今日の今日まで、存じませんでした。……じゃ、たんといただきやす。とても、ただじゃそのあとは伺えねえ」

「馬鹿ア言え、そんなんじゃねえ」

「などと仰言るが」

「櫓下で梅吉と言っていた時にゃあ一二度逢ったことがあるが、膚を見たなア、今朝がはじめてだ」

千太は、あわてて盃をおき、

「じゃア、ごらんなったんで」

「ああ、見た」

千太は、毒気をぬかれて、

「旦那も、おひとが悪い。さんざ、ひとに喋舌らせておいて、ああ、見た、はないでしょう。……それに、あっしまで出しぬいて……」

「悪く思うな。……ちょうど、つい眼と鼻の、露月町の自身番にいたでな」

ゆっくりと盃をふくむと、

「千太、ありゃア、早打肩なんぞじゃねえ、殺られたんだな」

千太は、ぷッと酒の霧を吹いて、

「これは失礼」

あわててその辺を拭きまわりながら、

「でも、まるっきり傷なんてえものは……」

藤波は、ニヤリ笑って、

「ときに、千太、千賀春は、どっちの手に撥を持って死んでいた?」