Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.327 Zeichen · 43 Bildschirme
衿もとから手さきだけ出して長い顎のはしをつまみながら、高くあがった烏凧をトホンと見あげてござる。
顎十郎のからす凧は、黒い翼をそらせ、青い青い空の高みで、ちょうど生きた烏のようにゆっくりと身をゆすっている。
五角、軍配、奴、切抜き……極彩色の凧ばかりのなかで、黒一色の顎十郎のからす凧がひどく目立つ。
黒塗の上へ湿気どめにうすく明礬をひいてあるので、陽の光をうけて傾くたびに、ギラリと銀色に光る。
小川町の紙凧屋、凧八で十文で買ったからす凧。けさ早くから二番原へやってきて、夢中になって凧あげをしている。
鬢の毛を風にほおけ立たせ、だいぶご機嫌のていで、空を見あげながらニヤついているところへ、通りかかったのが、れいのひょろ松。
呉服橋うちの北町奉行所から、神田の自分のすまいへ帰るちょうど道順。
いつもの癖で、セカセカと前のめりになりながら、二番原へはいって来た。
フイと足をとめて、顎十郎のうしろ姿を眺めていたが、まぎれもないとわかると、呆れかえったという顔で近づいてきて、
「阿古十郎さん、……あなたは、まあ、いったい、なにをしていらっしゃるんです」
顎十郎は、ゆっくりと振りかえって、