Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.040 Zeichen · 26 Bildschirme
そ、それが無念で……」
癇がたかぶってきて、あとがつづけられなくなったと見え、言葉を切って肩で息をついていたが、急にキッと顔をふりあげると、
「捕物吟味の御前試合などとは、まだ話にも例にもない。日本はじまって以来これが最初。二度とはない一期のおり。……わたくしといたしましても今度ばかりは必死。……さきほど、かこい場の下しらべをおことわり申しあげましたのも、石庵にあうまいと申しましたのも、しょうしょう、覚悟があってのことなのでございます」
といって、ジリッと膝をすすめ、
「むこうがなにも知らずに、のほほんと寒鮒をせせっているのに、こちらが血眼になって下しらべ下ごしらえじゃあ、いかにも藤波がかわいそうです。……さまざまにお心をつかってお手配をくださったことはありがたいと申しあげたいところですが、実のところはたいへんに不服。……その場では思うような調べもできまいから、今のうちに手をつくせとおっしゃったのを煮えかえるような気持できいておりました。……そんなんじゃねえ。物ごころのついたときから番所の垢を舐め、寝言にも、捕ッた捕ッたという肚っからの控同心。つれあいも子供も御用の邪魔とばかりに、この年になってまだひとり身。