Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.040 Zeichen · 26 Bildschirme
追い立てを喰った七ツさがりの浦島が、いまこの岸にうちあげられたといった体。
もとは、甲府勤番の伝馬役。そいつを半年たらずで見ン事しくじり、与力の叔父の手びきでやっと北町奉行所の下ッぱに喰いついているケチな帳面繰り。
藤波友衛が、必死の覚悟で房州までさがしに行った、これが当の顎十郎、ひとの気も知らないで、こんなところで、薄ぼんやりと鮒を釣っている。
もっとも、顎十郎ひとりじゃない。
そのかたわらに見るから憐れをもよおすような、病みやつれた六十ばかりの老爺、下草にべったりと両手をつき、水洟をすすりながら、なにかクドクドとくり言をのべている。
「……ただいまも、申しあげたように、もとは、中国でも名のある家柄。馬まわりにて五百石をたまわり、なに不自由なく暮したこの身が、ふとしたことで扶持に離れ、それ以来ながらくの浪々。……せがれの伝四郎ことは、かく申すは憚りながら、若年のころより弓術に秀で、なかんずく、大和流の笠懸蟇目、伴流のともうす水矢をよくいたしますなれど、うらぶれはてたる末なれば、これを世にだすよすがもなく、ついこのさきの小村井のはずれに住みついてしがない暮しをいたしておりましたるうち、嫁はなれぬ手仕事に精魂をつかいはたし、昨年の秋、六つをかしらに四人の子を残して死亡り、うってくわえて妻は喘息、それがしは疝痛