Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.028 Zeichen · 30 Bildschirme
どうでもここは立退かせて、もっと別なところへ……」
といいながら、また一歩ふみだそうとすると、千鳥の啼くような鋭い空鳴りがして、どこからともなく飛んできた一本の小柄、うしろざまに裾をつらぬき、ピッタリと前裾のところを縫いつけた。ちょうど足架をかけられたように、裾にひきしめられて、足がきすることも出来ない。顎十郎はまた、アッと恐悚の叫びをあげ、
「こいつアいけない。あの二人に近づこうとすると、かならずやられる。いわんや、俺の手にたつような相手じゃない。へたにガチ張ったら、たったひとつの命を棒にふる。こういうときは、尻尾を巻いて逃げるにかぎる」
蹲って小柄をぬきとって、草の上へほうりだすと、頭をかかえて、むさんに川下のほうへ逃げだした。
それから十日ほどのち、向島の八百松の奥座敷。顎十郎と藤波のふたり。
「……御承知の通り、江戸の洲崎は、洲崎の浜なんぞとはいわない。石口十兵衛からその話を聞いたとき、手前はすぐ、こりゃあ『貞丈雑記』にある例の故事だと気がついた。むかし、……さる身分の高い方が、通りすがりの法印に、恐れながらあなたのお顔には乞食の相がある、といわれ、国をおさめる前に、悪因をはらっておこうというので、筑前小佐島のすさきの浜というところへ出かけ、網をひいている漁師から、乞食のていで、魚をもらって歩かれた