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Japanische Klassiker mit Furigana

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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.028 Zeichen · 30 Bildschirme

Aozora Bunko

……ここらがあなたの有難いところ。名札紙を買わせて、新しく書けばいいものを、たとえ紙一枚でも無駄になさらぬ節倹なお心がけ。一国をあずかる御家老とは、実にかくありたいもの。いや、冷かしてるんじゃありません。ほんとうの話。……ところが、どうして更科というかというと、失礼ながらあなたのお顎に、お蕎麦のくずが……」

あわてて顎を撫でるので、さすがの顎十郎、たまりかねてヘラヘラと笑いだし、

「ついているとは申しておりません。もっと確かな証拠は、あなたの襟にさした爪楊子。その平に、真砂町更科と刷ってある。いけませんね、これじゃアわざわざ日本橋を大まわりして来たかいがない。いわばまるであけすけ。いくら突っぱってもこう尻ぬけじゃなんにもならない」

石口十兵衛は、膝に拳をおいて、凝りかたまったようになっていたが、突然、畳の上に両手をすべらすと頭をさげ、

「御眼力、……御明察。かくほどまでとは、思いもかけませんことで……なんともはや……」

顎十郎は、またとぼけた顔つきになって、

「いや、そうまでおっしゃることはいりません。あなたのように細心緻密な方が、ひとにものをたのむときは、どういう礼をとらねばならぬかご存じないわけはない。