Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.707 Zeichen · 20 Bildschirme
「もう出来ましたかえ」
といいながら、文机のほうを覗きこむ。
庄兵衛は、またしてもあわてふためいて、いそがしく目顔で知らせながら、
「出来たとは、なにが。……わしは知らぬぞ」
花世は、怨じるような顔で、
「おや、いやな。……そら、御尊像のことでござります」
顎十郎は、そっくりかえってふアふアと笑いだし、
「いやはや、こいつは大笑いだ。……あなたはうまく隠しおおせたつもりだったでしょうが、種はさっきからあがっているんですぜ。……版木だけは本でかくしても、膝の木くずはごまかせない。あなたが御法度の大黒尊像を版木で起していたことは、さっきからちゃんと見ぬいているんです。……頭かくして尻かくさず、叔父上、年のせいで、あなたもだいぶ耄碌なすったね。……ほら、証拠はこの通り」
急に手をのばして文机の本をはねのけると、その下からおおかた彫りあがった大黒尊像の版木があらわれた。
これは、例の幸運の手紙とおなじもので、美濃紙八枚どり大に刷った大黒天像を二枚ひとつつみにし、しかるべき有縁無縁の善男善女の家にひそかに頒布するもので、添書に、『一枚は箪笥の抽斗におさめ、一枚はこれを版に起して百軒に配布すべし』