Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.022 Zeichen · 36 Bildschirme
鐘ガ淵の近くまでノソノソやってくると、一丁ほど向うで、五人ばかりの人間が淵へ身を乗り出すようにして、忍び声で代るがわる崖の下へなにか言いかけると、崖の下からおうむがえしに、よく透る落着いた女の声がきこえてくる。
なにをしているのだろうと思って、断崖の端へ手をついて女の声のするほうを斜めに見おろした途端、顎十郎は思わず、ほう、と声をあげた。
川霧がたてこめて月影は薄いが、ちょうど月の出で、蒼白い月光が断崖の面へ斜めにさしかけているので、そこだけがはっきりと見える。
蓑虫のようにグルグル巻きにされた一人の女が、六十尺ばかりも切立った断崖へ、一本の綱で吊りさげられてブラブラと揺れている。
さっきから落着いた声でものを言っているのは、一本の綱で宙ぶらりんになっているその女なのだった。こんなことを言っている。
「……殺すというなら、お殺しなさい。……わけはないでしょう、この綱をスッパリと切りさえすればいいんですからね。どうせ、あたしはこんなふうにがんじがらめになっているのですし、こんなはげしい流れなんだから、あたしは溺れて死ぬほかはない」
上のほうでは、押し殺したような含み声で、