Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.022 Zeichen · 36 Bildschirme

Aozora Bunko

「その中に『鹿』という字のついた地名があるか」

「……残念ながらございません。……手前のかんがえでは、これは鹿ではなく平仮名の『か』あるいは『しし』と読ませるつもりと心得ます。……『か』は申すまでもなく鹿の子の『か』……。『しし』は鹿谷の『しし』。……まず、かようなわけと愚考いたします」

「いかさま、な。……なにはともあれ、一日も早く居所を捜しだし、不愍だが手筈通りにいたせ。そうなくては佞奸の水野を圧えることが出来ぬ。……水野の復職の理由が不明だによって、閣内はいうまでもない、市中でもさまざま取沙汰するそうな。……わしとしては、この上、一日も水野の圧迫を忍びとうない、不快じゃ」

「おこころは充分お察し申しあげております。……かならず……かならず……」

「たのむ」

寛濶なひとは、それで数寄屋の中へはいってしまった。村垣は庭土に三つ指をついて首を垂れたまま、いつまでもじっとしている。

顎十郎は、松の上で、

「……早く行かねえか! これじゃ降りられやしねえ、泣くならどこかへ行って泣け」

と、ボヤいていると、村垣はようやく膝の土を払って立ちあがり、顔を俯向けるようにして並木路のほうへ行ってしまった。