Japanische Klassiker mit Furigana
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ふろくようのはなし
風呂供養の話
田中 貢太郎
Lesen Sie 風呂供養の話 (ふろくようのはなし) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.200 Zeichen · 5 Bildschirme
そして、彼方此方へ往って、何処の家の風呂でもおかまいなしに覗き込んで泣いていたが、終いには空の浴槽の中へ裸体で入っていたり、万一これをさまたげる者でもあると、火をつけようとするのに手がつけられなかった。
そこで勘右衛門の家では、千代を座敷牢へ入れたが、何時の間にか脱け出して、自分の家へ火をつけて、浴槽の中へ入って焼死した。
それと前後して、旅僧を惨殺した真犯人が縊死したので、勘右衛門は未決から釈放せられた。犯人は千代に失恋した村の若者であった。
千代の怨霊が夜な夜な風呂場に現れると云う噂がたったのは、それから間もなくであった。そのために其の部落では、各戸にあった風呂を廃して共同風呂を設け、そこで入浴することになった。
共同風呂を設けた処は、酒や雑貨を商うかたわら、旅籠を兼ねている家であった。そこは裏の小川から水車で水を汲みあげるので、共同風呂の中には平生木の葉や芥虫の死骸などが浮いていた。時には小魚が泳いでいることもあった。
部落の人は共同風呂を作ったばかりでなく、千代の命日には、風呂供養とも云うべき一種の行事を営んで千代の霊を慰めたが、その日は部落の人たちは、一日じゅう行水もしないで、風呂桶を浄め、そして、それに供えものをし、燈明をあげるのであった。