Japanische Klassiker mit Furigana
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ふうきんとさかなのまち
風琴と魚の町
林 芙美子
Lesen Sie 風琴と魚の町 (ふうきんとさかなのまち) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.372 Zeichen · 27 Bildschirme
「食いたかもの、仕様がなかじゃなっか!」
母はピシッと私のビンタを打った。学校帰りの子供達が、渡し船を待っていた。私が殴られるのを見ると、子供達はドッと笑った。鼻血が咽へ流れて来た。私は青い海の照り返りを見ながら、塩っぱい涙を啜った。
「どこさか行ってしまいたい」
「どこさか行く云うても、お前がとのような意地っぱりは、人が相手にせんと……」
「相手にせんちゃよか! 遠いとこさ、一人で行ってしまいたか」
「お前は、めんめさえよければ、ええとじゃけに、バナナも食うつろが、蓮根も食いよって、富限者の子供でも、そげんな食わんぞな!」
「富限者の子供は、いつも甘美かもの食いよっとじゃもの、あぎゃん腐ったバナナば、恩にきせよる……」
「この子は、嫁様にもなる年頃で、食うこツばかり云いよる」
「ぴんたば殴るけん、ほら、鼻血が出つろうが……」
母は合財袋の中からセルロイドの櫛を出して、私の髪をなでつけた。私の房々した髪は櫛の歯があたるたびに、パラパラ音をたてて空へ舞い上った。
「わんわんして、火がつきゃ燃えつきそうな頭じゃ」
櫛の歯をハーモニカのように口にこすって、唾をつけると、母は私の額の上の捲毛をなでつけて云った。