Japanische Klassiker mit Furigana
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かぜたちぬ
風立ちぬ
堀 辰雄
Lesen Sie 風立ちぬ (かぜたちぬ) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 54.998 Zeichen · 108 Bildschirme
生墻に沿うて、いろんな外国種のも混じって、どれがどれだか見分けられないくらいに枝と枝を交わしながら、ごちゃごちゃに茂っている植込みの方へ近づいてゆくと、それらの茂みの上には、あちらにもこちらにも白や黄や淡紫の小さな莟がもう今にも咲き出しそうになっていた。私はそんな茂みの一つの前に立ち止まると、去年の秋だったか、それがそうだと彼女に教えられたのをひょっくり思い出して、
「これはライラックだったね?」と彼女の方をふり向きながら、半ば訊くように言った。
「それがどうもライラックじゃないかも知れないわ」と私の肩に軽く手をかけたまま、彼女はすこし気の毒そうに答えた。
「ふん……じゃ、いままで嘘を教えていたんだね?」
「嘘なんか衝きやしないけれど、そういって人から頂戴したの。……だけど、あんまり好い花じゃないんですもの」
「なあんだ、もういまにも花が咲きそうになってから、そんなことを白状するなんて! じゃあ、どうせあいつも……」
私はその隣りにある茂みの方を指さしながら、「あいつは何んていったっけなあ?」
「金雀児?」と彼女はそれを引き取った。私達は今度はそっちの茂みの前に移っていった。