Japanische Klassiker mit Furigana
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しょくま
食魔
岡本 かの子
Lesen Sie 食魔 (しょくま) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.911 Zeichen · 74 Bildschirme
「もし、ひょっとして汚しちゃ、悪かございません?」と一応念を押してみたが、良人は眉をぴくりと動かしただけで返事をしなかった。この上機嫌を損じてはと、逸子は子供を紐で負い替え本座敷の支度にかかった。
畳の上には汚れ除けの渋紙が敷き詰めてある、屏風や長押の額、床の置ものにまで塵除けの布ぶくろが冠せてある。まるで座敷の中の調度が、住む自分等を異人種に取扱い、見られるのも触れられるのも冒涜として、極力、防避を申合せてるようであった。こうしてから自分等に家を貸し与えた持主の蛍雪の非人情をまざまざ見せつけられるようで、逸子には憎々しかった。
彼女は復讐の小気味よさを感じながらこれ等の覆いものを悉く剥ぎ取った。子供の眼鼻に塵の入らぬよう手拭を冠せといて座敷の中をざっと叩いたり掃いたりした。何かしら今夜の良人の気分を察するところがあって、電灯も五十燭の球につけ替えた。明煌々と照り輝く座敷の中に立ち、あたりを見廻すと、逸子も久振りに気も晴々となった。しかし臆し心の逸子はやはり家の持主に対して内証の隠事をしている気持が出て来て、永くは見廻していられなかった。彼女は座布団を置き、傍にビール罎を置くと次の茶の間に引下りそこで中断された母子の夕飯を食べ続けた。