Japanische Klassiker mit Furigana
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しょくま
食魔
岡本 かの子
Lesen Sie 食魔 (しょくま) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.911 Zeichen · 74 Bildschirme
糺の森がぼーっと霞んで見えなくなる。おや自分は泣いてるなと思って眼瞼を閉じてみると、雫の玉がブリキ屑に落ちたかしてぽとんという音がした。器用な彼はそれでも少しの間に一握りほどの雑魚を漁り得る。持って帰ると母親はそれを巧に煮て、春先の夕暮のうす明りで他人の家の留守を預りながら母子二人だけの夕餉をしたためるのであった。
母親は身の上の素性を息子に語るのを好まなかった。ただ彼女は食べ意地だけは張っていて、朝からでも少しのおなまぐさが無ければ飯の箸は取れなかった。それの言訳のように彼女はこういった。「なんしい、食べ辛棒の土地で気儘放題に育てられたもんやて!」
鼈四郎は母親の素性を僅に他人から聞き貯めることが出来た。大阪船場目ぬきの場所にある旧舗の主人で鼈四郎の父へ深く帰依していた信徒があった。不思議な不幸続きで、店は潰れ娘一人を残して自分も死病にかかった。鼈四郎の父はそれまで不得手ながら金銭上の事に関ってまでいろいろ面倒を見てやったのだがついにその甲斐もなかった。しかし、すべてを過去の罪障のなす業と諦めた病主人は、罪障消滅のためにも、一つは永年の恩義に酬ゆるため、妻を失ってしばらく鰥暮しでいた鼈四郎の父へ、せめて身の周りの世話でもさせたいと、娘を父の寺へ上せて身罷ったという。