Japanische Klassiker mit Furigana
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しょくま
食魔
岡本 かの子
Lesen Sie 食魔 (しょくま) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.911 Zeichen · 74 Bildschirme
お絹は唾液がにじんだ脣の角を手の甲でちょっと押えてこういった。
「うまかろう。だから食ものは食ってから、文句をいいなさいというのだ」
鼈四郎の小さい眼が得意そうに輝いた。
「ふだん人に難癖をつける娘も、僕の作った食もののうまさには一言も無いぜ。どうだ参ったか」
鼈四郎は追い討ちしていい放った。
お絹は両袖を胸へ抱え上げてくるりと若い料理教師に背を向けながら、
「参ったことにしとくわ」
と笑い声で応けた。
ふだん言葉かたき同志の若い料理教師と、妹との間に、これ以上のうるさい口争いもなく、さればといって因縁を深めるような意地の張り合いもなく、あっさり済んでしまったのをみて、お千代はほっとした。安心するとこの姉にも試しに食べてみたい気持がこみ上げて来た。
「じゃ、あたしも一つ食べてみようかしら」
とよそ事のようにいいながらそっと指尖を鉢に送って小さい截片を一つ撮み取って食べる。
「あら、ほんとにおいしいのね」
眼を空にして、割烹衣の端で口を拭っているときお千代は少し顔を赭めた。お絹は姉の肩越しに、アンディーヴの鉢を覗き込んだが、
「鼈四郎さん、それ取っといてね、晩のご飯のとき食べるわ」