Japanische Klassiker mit Furigana
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しょくま
食魔
岡本 かの子
Lesen Sie 食魔 (しょくま) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.911 Zeichen · 74 Bildschirme
性癖から来るものらしかった。彼は鼈四郎が来るまえから鼈の料理に凝り出していたのだが、鼈鍋はどうやらできたが、鼈蒸焼は遣り損じてばかりいるほどの手並だった。鼈四郎は白木綿で包んだ鼈を生埋めにする熱灰を拵える薪の選み方、熱灰の加減、蒸し焼き上る時間など、慣れた調子で苦もなくしてみせ、蛍雪は出来上ったものを毟って生醤油で食べると近来にない美味であった。それまで鼈四郎は京都で呼び付けられていた与四郎の名を通していたのだったが、以後、蛍雪は与四郎を相手させることに凝り出し、手前勝手に鼈四郎と呼名をつけてしまった。娘の姉妹もそれについて呼び慣れてしまう。独占慾の強い蛍雪は、鼈四郎夫妻に住宅を与え僅に食べられるだけの扶養を与えて他家への職仕を断らせた。
鼈四郎は、蛍雪館へ足を踏み入れ妹娘のお絹を一目見たときから「おやっ」と思った。これくらい自分とは縁の遠い世界に住む娘で、そしてまたこれくらい自分の好みに合う娘はなかった。いつも夢見ているあどけない恰好をしていて、そしてかすかに皮肉な苦味を帯びている。青ものの走りが純粋無垢でありながら、何かぎ取られた将来の生い立ちを不可解の中に蔵している一つの権威、それにも似た感じがあった。