Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しょくま

食魔

岡本 かの子

Lesen Sie 食魔 (しょくま) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.911 Zeichen · 74 Bildschirme

Aozora Bunko

だがこの青年が身も魂も食ものに殉じていることは確だ。若い身空で女の襷をして漬物樽の糠加減を弄っている姿なぞは頼まれてもできる芸ではない。生れ附き飛び離れた食辛棒なのだろうか、それとも意趣があって懸命にこの本能に縋り通して行こうとしているのか。

お絹のこころに鼈四郎がいい捨てた言葉の切れ端が蘇って来る。「世は遷り人は代るが、人間の食意地は変らない」「食ものぐらい正直なものはない、うまいかまずいかすぐ判る」「うまさということは神秘だ」――それは人間の他の本能とその対象物との間の魅力に就てもいえることなのだが、鼈四郎がいうとき特にこの一味だけがそれであるように受取らせる。ひょっとしたらこの青年は性情の片端者なのではあるまいか、他の性情や感覚や才能まで、その芽をぎ取られ、いのちは止むなく食味の一方に育ち上った。鼈四郎が料理をしてみせるとき味利きということをしたことが無い。身体全体が舌の代表となっていて、料理の所作の順序、運び、拍子、そんなもののカンから味の調不調の結果がひとりでに見分けられるらしい。食慾だけ取立てられて人類の文化に寄与すべく運命付けられた畸形な天才。