Japanische Klassiker mit Furigana
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しょくま
食魔
岡本 かの子
Lesen Sie 食魔 (しょくま) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.911 Zeichen · 74 Bildschirme
お絹はこういうときは負けていず、必ず遣り返したが、この青年の持つ秀でた技倆には、何か関心を持って来たようだった。鼈四郎は調子づき、自己吹聴がてら彼の芸術論など喋った。遠慮は除れた。しかしただそれだけのものであった。この娘こそ虫が好く虫が好くと思いながら、鼈四郎は、逸子との変哲もない家庭生活に思わず月日を過し子供も生れてしまった。もう一人檜垣の家の後嗣に貰える筈の子供が生れるのを伯母さんは首を長くして待受けている。
今宵、霧の夜の、闇の深さ、粘りこさにそそられて鼈四郎は珍らしく、自分の過ぎ来た生涯を味い返してみた。死をもって万事清算がつく絶対のものと思い定め、それを落付きどころとして、その無からこの生を顧り、須臾の生なにほどの事やあると軽く思い做されるこころから、また死を眺めやってこれも軽いものに思い取る。幼児の体験から出発して、今日までに思想にまで纏め上げたつもりの考え。
しかる上は生きてるうちが花と定めて、できることなら仕度い三昧を続けて暮そうという考えは、だんだんあやしくなって来た。何一つ自分の思うこととてできたものはない。たった一つこれだけは漁り続けて来たつもりの食味すら、それに纏る世俗の諸事情の方が多くて自分を意外の方向へ押流し、使い廻す挺にでもなっているような気がする。