Japanische Klassiker mit Furigana
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しょくま
食魔
岡本 かの子
Lesen Sie 食魔 (しょくま) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.911 Zeichen · 74 Bildschirme
少年の頃、自分がうまいものをよそで饗ばれて帰って話すとき、母は根掘り葉掘り詳しく聞き返し、まるで自分が食べでもしたような満足さで顔を生々とさしたではないか。そして自分が死水を取ってやった唯一の親友の檜垣の主人は、結局その姪を自分に妻あわして、後嗣の胤を取ろうとする仕掛を、死の断末魔の無意識中にあっさり自分に伏せている。こう思って来ると、世の中に自分一代で片付くものとては一つも無い。自分だけで成せたと思うものは一つもない。みな亡父のいうお互いさまで、続かり続け合っている。はじめて気の付くのは、いつぞや京都の春で、二回会ったきりの画家と歌人夫妻のいった言葉だ。「おれたちは、極楽の場塞げを永くするのも済まないと思って、地獄の席を探しているところだ」と。そうしてみると、せんせいたちもこの断ち切れないお互いのものには、ぞっこん苦労した連中かな。夫人のいった、まこと、まごころというものも、安道徳のそれではなくて一癖も二癖もある底の深い流れにあるらしいものを指すのか。それは何ぞ。
夜はしんしんと更けて、いよいよ深みまさり、粘り濃く潤う闇。無限の食慾をもって降る霰を、下から食い貪り食い貪り飽くことを知らない。