Japanische Klassiker mit Furigana
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たかちほにおもう
高千穂に思う
豊島 与志雄
Lesen Sie 高千穂に思う (たかちほにおもう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.292 Zeichen · 11 Bildschirme
いつまで耳を傾けていても、霧のなかのその声は絶えない。私はもうその声をも後にしなければならなかった。天候の変化を恐れたのではない。時間の不足を懸念したのだ。下山の折の速力を加算しても、六時間を五時間半以内に短縮することが如何に難事であるかを、私の足は知った。私の足はもはや随分と疲労している。
馬の背越を過ぎて、少しく下り道になる。これで第二段階は終ったのだ。次で第三段階の登攀となる。その登り口を、天の河原という。天孫を記念するささやかな碑がある。今やこの天の河原も、霧に巻かれてしまっている。高千穂の頂上はすぐそこにある筈だが、それ濃霧に隠れて、ただ、砂地に岩塊をちりばめた急峻な斜面のみが、尺余の植物の茂みをあちこちにそよがしている。
その斜面にとっついて、最後の努力を試みるだけだ。目指す頂上が見えないことは、努力を一層苦しいものにする。
理想は常に永遠の彼方にあるものかも知れない。然し永遠の彼方にあるにせよ、一筋の道を進む者は不断にそれを眼で見ている。眼で見ていることが永遠の道程を進む支持となるのだ。
だが、高千穂の頂上は、たとえ見えなくとも、すぐそこにある筈だった。