Japanische Klassiker mit Furigana
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こうちがえり
高知がえり
寺田 寅彦
Lesen Sie 高知がえり (こうちがえり) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.148 Zeichen · 7 Bildschirme
右舷へ出ると西日が照りつけて、蝶々に結った料理屋者らしいのが一人欄へもたれて沖をぼんやり見ている。会食室の戸が開いているからちらと見たら、三十くらいの意気な女と酒をのんでいる男があったが、顔はよく見えなかった。また左舷へ帰って室へはいって革鞄から『桂花集』を引っぱり出して欄へもたれて高く音読すると、艫で誰れか浮かれ節をやり出したので皆が其方を見る。ボーイにマッチを貰って煙草を吸う。吸殻を落すと船腹に引付いて落ちてすぐ見えなくなる。浦戸の燈台が小さく見える。西を見ると神島が夕日を背にして真黒に浮上がって見える。横波の入日をこして北を見ると遠い山の頂に白いものが見える。ボーイが御茶を上げましょと云うて来たから室へはいると、前の商人はあわてて席を譲って「ドーゾコチラヘ」と言う。茶をのんで粗末なビスケットを二つ三つかじる。娘は毛布をかけてねたまま手を出してビスケットを取って食っている。スグまた室を出る。鴨が沢山ついていて、釣船もボツボツ見える。だいぶ浦戸に近よった。煙突の下で立ちながらめしを食っている男がある。例のボーイが cabin からいかがわしい写真を出して来て見せびらかしながら会食室へはいったと思うと、盛んに笑う声が洩れて来た。