Japanische Klassiker mit Furigana
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にしんぎょじょう
鰊漁場
島木 健作
Lesen Sie 鰊漁場 (にしんぎょじょう) von 島木 健作 (しまきけんさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.483 Zeichen · 49 Bildschirme
「そりゃ遅かろう」だって! そんなこたア俺だって知ってらア、糞でも喰らえ、と彼は腹のなかで叫んだ。自分ながらわけのわからない、じりじりとした怒りが荒々しく彼の身裡をかけ巡った。誰に向けられるともないその腹立たしさが、じつはなかば棄鉢になっている自分自身に向けられているということを彼自身は知る由もなかった。
鰊漁場の漁夫の雇傭契約が、前年内に取りきめられる例であるということは、人におしえられるまでもなく源吉も知っていた。三月から、五六月まで、農閑期を利用して鰊場稼ぎをする百姓たちにとっては、その際の前借金が、年末金融の唯一最大のものであった。前年の十一月、十二月中に彼らは給料の前借をして出稼を契約し、その金で辛うじて越年し、――翌年の春、実際に働いて帰るときに受けとる金というものは、帰郷の旅費にも足らぬものが多いのだった。その間の事情をよく知っておればこそ、重い雪靴の足を引ずって教えられた道を大丸の事務所の方へあるきながら、源吉の心は暗い不安につつまれていた。もう遅い、と、もしもここでことわられたらどうしようという不安だった。――親子五人の口をつなぐ飯米の最後の二俵を、親爺の留守のあいだに橇で町へ運び出し、金に代え、それを博奕のもとでに使い果してしまったのはつい一週間まえのことだ。