Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
ヒラリッ――と虚空へ抜けた助広の刀光に、縄の断れ目がクルクルッと躍った。
同時に、あっと思う間もなく、孫兵衛そのものも、縄の残りを体に絡んだまま、崖から雑木の谷間へ跳びおりてしまった。
「ちぇッ」と叫びながら、すぐに、草むらから駈けだしてきた男がある。
断られた捕縄を、舌うちしながら、キリキリ手元へ巻き込んで、崖ぎわから、削り立った急勾配を、残念そうに覗いていた。
草ほこりのたかった髷先を散らして、べんけい縞の単衣、きりッと裾をはしょって脚絆がけ。それは目明しの万吉であった。
「ええ、惜しいことをした。投げた呼吸は確かだったんだが、たぐり寄せたのが一息遅かった……こんなことじゃ、おれの方円流もまだ上手とはいえねえなあ」
すると、そこから少し離れたところの一本松、その松の根元の青芒から、ムックリ身を起こした侍が、こっちへ足を運んできながら、
「万吉、鳩が見えたのか」
こう声をかけた。
みると、常木鴻山の腹心、俵一八郎で、万吉と同じように、旅ごしらえの軽装である。
「なあに、鳩を見張っているところへ、思いがけねえ奴が来たので、出来心の方円流、ブーンと投げてくれたはよかったが、とうとうお十夜孫兵衛という、大物を逃がしてしまったところです」